sellerapple’s diary

本のアプリstandに投稿した記事の過去ログです。

「台湾生まれ、日本語育ち」 温又柔著 白水社

「台湾生まれ、日本語育ち 」温又柔著 白水社

 

母語」と「国語」の複雑な関係性、著者は始めは嫌悪していた台湾語、中国語、日本語が混ざり合う母親の「ママ語」からそのすべての言語が「母語」であると「発見」する、為政者の都合により変化する言語、その中で生きるとはそういう事なのだろう。

「そもそも中国語と台湾語と日本語とひとつづつ数える必要はないのかもしれない。三つの母語がある、というよりもひとつの母語の中に三つの言語が響きあっている、としたほうが自分の言語的現実をぴたりと言い表せるのではないか。考えてみればわたしは、中国語や台湾語を外国語として、というよりは、自分のニホンゴの一部のように感じている。わたしはもう、母たちの声を「和訳」しない。むしろ、記憶に向かって耳を凝らし、日本語として発せられたのではない音をたぐりよせる。」P.244

白水社Uブックスによる増補版。

2018.11.17