sellerapple’s diary

本のアプリstandに投稿した記事の過去ログです。

「私の東京町歩き」川本三郎著筑摩書房

「私の東京町歩き」川本三郎筑摩書房。雑誌「東京人」の87年~89年の連載を書籍化、つまり昭和の最後期だ。既に30年は経過しているのでここに書かれている町並みは既に存在しないかもしれないがしかし変わりゆくのが東京でありその儚さも魅力でありそれはしょうがない事だ。

著者はあとがきで「こういう散歩エッセーは本質的にさまざまな矛盾を含んでいる」ことを認めたうえで「町歩きは本当はただ無為に歩いているときがいちばん楽しい、観察したりタウンウォッチングしたりするより町の風景の中に自分を自然に溶け込ませているときがいちばん心地よい」と書いている。


「夕暮れ、見知らぬ町の見知らぬ居酒屋でひとりでビールを飲んでいるとき、寂びしいのだがしかし不思議と心が落ち着く」この心持はポルトガル語サウダージとでもいうべきか、ふらりと入った居酒屋で飲むビールがなんともいえず美味しそうだ。

 

前作と違って本作は東東京中心それも最果ての足立区舎人、江戸川区篠崎、大田区羽田といった辺境を巡るのも趣があるそしてそこには川が流れているのだ。